手術について
(対応している手術、相談)

整形外科で行う内視鏡手術(関節鏡手術 )

内視鏡手術
(関節鏡手術)とは

整形外科で行う内視鏡手術(関節鏡手術 )肩関節、股関節、膝関節、足関節などに対して行う、内視鏡による低侵襲手術です。
小さな切開から内視鏡を挿入し、医師がモニターを見ながら、内視鏡の先端から出す器具を操作して手術を行います。
損傷部に対するピンポイントの処置を行えることから、術後の回復に要する期間も短くなります。アスリートの方、手術が必要だけれど長期休みを取ることが難しいという方には、特に適した治療法と言えるでしょう。

内視鏡手術(関節鏡手術)のメリット

関節鏡下手術
  • 関節の奥、内部までの観察処置が可能
  • 傷口が小さくて済む(数ミリ~2cm程度)
  • 周囲の健常な組織を傷めずに済む
  • 手術後の運動機能の回復が早い
  • 手術後の関節拘縮が少ない

内視鏡手術(関節鏡手術)と外科手術が適する主な疾患

首(頚)

頚椎椎間板ヘルニア

背骨の1つ1つの骨のことを「椎骨」と言い、椎骨と椎骨のあいだにあるクッションの役割を果たすのが「椎間板」です。そして椎間板の中にある髄核という組織が飛び出すことを「椎間板ヘルニア」と呼びます。
つまり「頚椎椎間板ヘルニア」とは、頚椎(首の骨)で起こっている椎間板ヘルニアのことを指します。加齢による変性、不良姿勢、強度の高い運動・交通事故などを原因とし、首の痛みや肩こり、手のしびれなどの症状を伴います。悪化すると、下肢にも症状が現れます。

頚椎椎弓形成術

頚椎椎間板ヘルニアによって頚椎症を合併している場合に適応となる手術です。頚椎の後方部分の「椎弓」に切れ込みを入れ、脊柱管を拡大することで、脊髄の圧迫を取り除きます。

頚髄症

頚椎を通る脊髄が、頚椎の変形・ヘルニアなどによって圧迫され、手足のしびれや痛み・脱力感などの症状をきたした状態です。悪化すると、手の運動や歩行、排尿・排便の困難などに至ることもあります。

頚椎椎弓形成術

頚椎の椎弓に切れ込みを入れ、脊髄の通り道である脊柱管を拡大し、脊髄が受ける圧迫を取り除く手術です。

肩関節

内視鏡手術(関節鏡手術)肩関節

肩腱板断裂

肩甲骨から上腕骨にかけての腱が板状になって上腕骨頭を包み込んでいる「腱板」が断裂した状態です。
転倒後などに肩の痛み、腕が上がらないといった症状が続く場合には、腱板断裂の可能性を考えます。
保存療法により改善しない場合には、腱板を骨に縫着させる手術が必要になります。

鏡視下肩腱板修復術
鏡視下肩腱板修復術内視鏡で観察しながら、断裂した腱板を、糸付きのアンカーによって上腕骨頭へとくっつける手術です。
大きな断裂であるほど、アンカーの数が多くなります。

反復性肩関節脱臼

脱臼によって関節唇損傷が生じたり、骨の欠損を合併した場合には、容易に脱臼してしまう状態になることがあります(脱臼癖)。
関節唇の修復が必要になり、内視鏡やオープン法による手術が検討されます。

鏡視下バンカート修復術

内視鏡で観察しながら、関節包や関節唇、関節包靭帯複合体といった肩関節を安定させる組織の修復をする手術です。肩関節のまわりに、3~4箇所、約1センチの穴をあけてアプローチします。一旦関節唇を引き離してから、糸付きアンカーによって関節窩と関節唇を結んで補強します。

拘縮肩

四十肩・五十肩といった肩関節周囲炎などで肩の可動域が狭くなった状態です。
保存療法により改善しない場合には、内視鏡を用いて関節包を切開する手術が行われます。

手/指

手根管症候群

手の酷使、妊娠・出産・甲状腺機能低下症などに伴うホルモンバランスの変化、滑膜炎、人工透析などによって正中神経が圧迫されることで、親指・人差し指・中指、薬指(親指側半分)のしびれ、痛みなどの症状が現れます。痛みは、明け方に強くなる傾向があります。また、長期になると親指の付け根部分の筋肉が痩せてきます。

鏡視下手根管開放術、※外科的術式もある手根管開放術

内視鏡で手根管内を観察しながら、屈筋支帯、およびその遠位にある組織を切離することで手根管を解放する手術です。手術時間は20~30分です。

ばね指

ばね指とは、手に発症する腱鞘炎です。手の酷使、ホルモンバランスの変化などを原因として腱鞘がむくみ、腱の動きが低下することで、指の付け根の痛み・腫れ・熱感などの症状をきたします。指を動かす時には、「指が引っかかるような感じ」がし、ばねのように指がはねる動きが見られます。

腱鞘切開術

原因となっている腱鞘の真上の皮膚を切開し、狭くなっている一部の腱鞘を切開・切除することで、腱の動きをスムーズにする手術です。可動域、症状の改善を確認し、縫合します。

腰(背中)

腰椎椎間板ヘルニア

椎間板ヘルニアの中でももっとも多いのが、腰椎椎間板ヘルニアです。腰椎の椎間板の中の組織(髄核)が飛び出し、神経を圧迫することで、お尻~太もも~足首の痛み・しびれが引き起こされます。主な原因は、長時間の車の運転、中腰での作業、重い物を持つ作業などの長年にわたる継続です。

LOVE法:外科(オープン)+ MED法(エム・イー・ディー法:内視鏡下椎間板切除術 )

LOVE法とは、もっとも一般的な手術方法です。背中側から切開を加え、脊椎の一部を開いて、神経を圧迫する髄核や線維輪を取り除きます。
一方のMED法は、LOVE法よりも低侵襲な手術となります。内視鏡を用いるため皮膚の切開が小さくなり、アプローチする際の筋肉の損傷も抑えられ、術後の回復も早くなります。

腰部脊柱管狭窄症

椎間板ヘルニア、靭帯肥厚、腰椎すべり症などによって腰部の脊柱管が狭くなり、脊髄・神経が圧迫されることで、腰痛、脚のしびれ、麻痺などの症状をきたす疾患です。悪化すると、歩行困難、排尿・排便障害などの症状を引き起こすこともあります。また典型的な症状として、間欠跛行が挙げられます。間欠跛行とは、歩き始めてしばらくすると痛みが出ますが、前かがみで少し休むとまた歩けるようになることを繰り返す状態を指します。

後方椎体間固定術(TLIF/PLIF)

PLIFという手術では、腰~背中の皮膚に切開を加え、腰椎の後ろ側を露出させ、棘突起、椎弓の一部、椎間板を切除します。椎間板を切除した部位には、自家骨を挿入します。加えて、ゲージという人工物を挿入し、椎間の安定性を取り戻し、スクリューとロットで固定します。
TLIFという手術でも、腰~背中の皮膚に切開を加え、腰椎の後ろ側を露出させるところまでは変わりません。その後、片側の椎間関節を切除し、椎間孔を広げ、椎間板を切除する点が大きく異なります。最後は、スクリューとロットで固定し、椎体の安定性を取り戻します。PLIPよりも筋肉への侵襲・出血が少ない一方で、医師には高い技術と経験が求められます。

股関節

股関節唇損傷

「股関節唇」とは、股関節の“屋根”にあたる寛骨臼(臼蓋)の縁にある線維軟骨のことを指します。股関節唇が損傷すると、股関節の引っかかる感じ、関節がズレる感じなどの症状が見られます。また、脚を内側へと捻った時に痛みが出ます。
治療の基本となるのは、消炎鎮痛剤やステロイド注射、リハビリテーション、体位の指導などによる保存療法です。保存療法で十分な効果が得られない場合には手術を検討します。当院では、内視鏡を股関節内に挿入して治療する低侵襲の股関節鏡手術に対応します。

関節鏡下股関節唇修復術

股関節鏡を用いて、傷んだ股関節唇を縫い合わせる手術です。
股関節唇の損傷がひどい場合には、太ももの腸脛靭帯を使って再建します。

大腿骨寛骨臼インピンジメント(FAI)

股関節の大きな屈曲を繰り返すスポーツ・習慣、あるいは股関節の構造異常などを原因として、股関節内部、周辺組織が傷んでしまう病態です。股関節を動かした時の痛み、引っかかる感じ、コリッという異音などが見られます。軟骨のダメージが大きい場合には、変形性股関節症を合併することもあります。

関節鏡下股関節唇修復術

損傷した股関節唇を縫い合わせたり、関節内を掃除するとともに、大腿骨頭の出っ張りを削る手術です。股関節唇の再建が必要になる場合もあります。

膝関節

 

半月板損傷

膝関節のクッションの役割を果たす半月板が損傷した状態です。
痛み、引っ掛かる感じが強く日常生活やスポーツに支障をきたす場合には、切除術、あるいは機能を温存させるための縫合術を行います。
鏡視下半月板縫合術
鏡視下半月板縫合術関節鏡を用い、半月板の損傷部を縫い合わせる手術です。損傷が複数であったり、損傷がひどい場合には、次にご紹介する鏡視下半月板切除術が必要になります。
鏡視下半月板切除術

関節鏡を用い、半月板の損傷部を切除した上で、特殊な器械によって形成する手術です。

ACL(前十字靭帯)損傷

ACL(前十字靭帯)損傷は、スポーツなどで膝を捻った時などに損傷することがあります。半月板、内側靭帯を同時に損傷するケースも少なくありません。
放置すると変形性膝関節症に進行することがあるため、若い人の場合は手術を選択することが多くなります。手術では、膝屈筋腱や膝蓋腱を膝関節内に移植し、再建します。

前十字靭帯(ACL)再建術
前十字靭帯(ACL)再建術患者様ご自身の膝の裏の内側の腱を、ひも状に束ねて損傷部へと移植する手術です。腱の採取、移植は同じ1つの切開部からのアプローチとなります。また、腱を採取したことによる膝の機能への影響もほとんどありません。

変形性膝関節症

主に加齢を原因として、膝の軟骨が擦り減り、膝に痛みが出る疾患です。動かした時だけ痛い、歩くと痛い、階段を上がる時だけ痛いなど、症状の程度はさまざまです。悪化すると、安静時にも痛みが出るようになり、日常生活に大きな支障をきたします。

HTO(高位脛骨骨切り術:外科的手術)
膝関節の変形によって膝への負担が大きくなっている場合に適応となる手術です。脛骨の内側または外側から骨を切り、矯正することで、膝への負担を軽減します。

O脚・X脚

O脚(内反膝)、X脚(外反膝)はどちらも膝関節に過剰な負担をかけます。膝の痛みだけでなく、見た目が気になっている方も少なくありません。
マッサージやストレッチ、歪みの矯正による改善も期待できますが、当院では「HTO手術(高位脛骨骨切り術)」にも対応します。関節鏡で関節内を観察しながら脛骨を少量、切れ込みを入れるように切除し固定することで、脚の角度およびO脚・X脚の改善を図ります。

足関節

ATFL(前距腓靭帯)損傷

主にねんざを原因として、前距腓靭帯が部分断裂または完全断裂した状態です。スポーツ中の急性外傷の中でも、もっとも頻度の高い外傷と言えます。外くるぶしの前方部の痛み、腫れ、内出血を伴います。

鏡視下ATFL修復術
鏡視下ATFL修復術1センチ程度の皮膚切開をし、内視鏡を挿入して靭帯の修復を行います。肩・膝と比べると関節腔が狭いため、対応している医療機関はあまり多くありません。

その他

その他の股関節損傷や膝の疾患でも内視鏡手術が適応になることがあります。
適応の範囲は拡大しているため、さまざまな疾患で検討される手術の1つになっています。

内視鏡手術(関節鏡手術)のご相談

やす整形外科クリニックでは、丁寧な問診と画像検査による正確な診断、お一人おひとりに合った適切な治療の提供に努めています。
薬物療法、理学療法士によるリハビリテーションはもちろん、体外衝撃波治療にも対応しております。
ただ、上記のような保存療法では十分な効果が得られない場合、スポーツの復帰のための運動機能の高度な回復を目指す場合には、内視鏡手術をはじめとする外科的な治療にも積極的に取り組みます。膝・股関節人工関節、外反母趾の手術にも対応しておりますので、安心してお問合せ・ご相談ください。

※関節鏡手術については、提携する病院に当院の医師が出張し、執刀します。